お前だっての論理

 世の中には詭弁で相手を欺く人が少なからずいます。
 そういう人に騙されないように詭弁を知りましょう。


【問】
 Xの意見に反論せよ。

 A「Bは他人を否定することで自尊心を得ている。駄目な奴だ」
 X「そういうAだってBを否定しているではないか」

 こういう論理はネット上でもよく見られる。
 ウィキペディア「詭弁」の項目に載っていないので、とりあえず「お前だっての論理」と呼ぶことにする。

【解答】
 AとBの行為の内実は違うものなのに、どちらも「他人を否定する」という言葉で一括りにしているために起こる過ち。

 Bの行為は「自尊心を得るために他人を否定する」こと。
 Aの行為は「他人を否定することで自尊心を得る人を批判する」こと。

 Aは、自尊心を得るためにBを批判しているのではない。この点がBとは大きく異なる。
 複雑な事象を単純な言葉で置き換えると、このような過ちが起きる。

類例

※Xの意見が詭弁。

 A「人の悪口を言う人は嫌いだ」
 X「あなたもいま人の悪口を言っているではないか」

 A「日本は寄付が少ない。だから日本人は他人に冷たい」
 X「寄付をしない人を冷たいというAだって、その人たちに対して冷たい」

 Aが他人に自分の意見を押しつける。
 B「他人に自分の意見を押しつけてはいけない」
 X「Bこそ『押しつけてはいけない』という意見を他人に押しつけているではないか」

 Aが人種差別発言をする。
 B「人種差別主義者は出て行け!」
 X「BもAに対し差別発言をしているではないか」
 http://blogos.com/article/146501/

 X「2015年パリ同時多発テロは許されない。しかし有志連合による誤爆も犠牲者の目線から見ればテロだ」
  http://blogos.com/article/146695/
 (「テロ」という言葉の定義を曖昧にすることで、異なる2つの事象を同じものとしている)

 Xが他人の著作物を無許可でブログで使用し、アフィリエイトで稼いでいる。
 A(ツイッター)「Xのブログは著作権侵害だ。この泥棒め」
 X「Aだってツイッターのアイコンに(他人が著作権を持つ)アニメの画像を使っているではないか」
 (XもAも著作権侵害をしているが、他人の著作物を利用して利益を得るのと、ツイッターのアイコンに使うのとでは罪の重さがだいぶ違う。著作権侵害は罪の幅が広い。SNSなどの利用者なら、大抵の人は軽い侵害をしている。軽いものであれば、倫理的に問題がない←著作権者の利益を損なっていない場合も多い。A程度の行為ならOKだが、Xの行為はNGという判断もあり得る。したがってAがXを批判するのはおかしくない)

 「ここに張り紙をしてはならない」という張り紙がある。
 X「張り紙をしてはいけないのに張り紙がされている。この張り紙はおかしい」
 (張り紙の字面を愚直に解釈すれば矛盾になるが、わざわざ矛盾したことを言う人はいないため、本来は『宣伝目的などの張り紙をしてはならない』という意味と解釈できる。張り紙を禁止する張り紙自体は禁止していない。この張り紙のおかげでそれ以上張り紙が増えることを抑える効果が期待できるので意義がある。言葉を解釈するときは柔軟さが求められる。これを寛容の原則という)