ネット上の文章は段落の先頭を1マス空けるか問題(1)

 〔約2400文字|読了の目安:4.8分〕

 ネット上に文章を書くとき、段落の先頭の文字を字下げするかしないかという問題がある。言い換えると、改行した後に行頭を1マス空けるか空けないか。インデントともいう。

 要するにこういうこと。

◎字下げする場合

 僕の経験するところによれば、今の小説の読者といふものは、大抵はその小説の筋を読んでゐる。その次ぎには、その小説の中に描かれた生活に憧憬を持つてゐる。これには時々不思議な気持がしないことはない。
 現に僕の知つてゐる或る人などは随分経済的に苦しい暮らしをしてゐながら、富豪や華族ばかり出て来る通俗小説を愛読してゐる。のみならず、この人の生活に近い生活を書いた小説には全然興味を持つてゐない。
 第三には、第二と反対に、その次ぎには読者自身の生活に近いものばかり求めてゐる。

 引用元:芥川龍之介『小説の読者』青空文庫

◎字下げしない場合

僕の経験するところによれば、今の小説の読者といふものは、大抵はその小説の筋を読んでゐる。その次ぎには、その小説の中に描かれた生活に憧憬を持つてゐる。これには時々不思議な気持がしないことはない。
現に僕の知つてゐる或る人などは随分経済的に苦しい暮らしをしてゐながら、富豪や華族ばかり出て来る通俗小説を愛読してゐる。のみならず、この人の生活に近い生活を書いた小説には全然興味を持つてゐない。
第三には、第二と反対に、その次ぎには読者自身の生活に近いものばかり求めてゐる。

 小学校で原稿用紙の書き方を習ったときは、字下げすると教えられた。しかしネット上では字下げしないことが多い。一体どちらにすべきなのか。
 この件については以下のように疑問が呈されているが、まともな結論は得られていない。
 かつて文章の書き方は「段落初行一字アキ」が原則であり、すべ… - 人力検索はてな
 改行の後、次の行の先頭に1文字分のスペースを空けない文章を… - 人力検索はてな

 この件について以前から考えていたが、自分なりに結論が出た。

【結論】
  • 改行後に1行空けないなら、字下げするべき。
  • 改行後に1行空けるなら、字下げしなくてもよい。

改行後に1行空けない場合

 字下げする理由は、そこに段落があることが一目でわかるようにするためだ。

 字下げすれば、行頭(左側)を見るだけで段落の位置がわかる。

 字下げしなくても、行末(右側)に余白があるかどうかを見れば段落が分かれているかわかると考える人もいるだろうが、たまたま段落の最後の行末に文末がくる場合、そこに改行(=段落)があるかどうかは区別できない。

 また行頭の高さが揃っていると、行末の余白を確認して次の行頭に目を戻す際、どこが次の行かわかりづらい。1行の文字数が多い(長い)ほどわかりにくい。字下げしていれば、そこを目印にできる。

 したがって改行後に1行空けないのなら、段落の最初は字下げしなければならない。

改行後に1行空ける場合

 一方ネットでは、改行したら1行空ける書き方をよく見かける。

 これだと「1行空いている所が段落の分かれ目」になるので、それだけで段落の位置が明確になる。字下げする代わりに1行空けているわけだ。だから字下げする必要はない。

 ただし個人的にはこの場合でも字下げしていいと思う。
 なぜかというと、ネット上では文章のプロではない人もたくさん文章を書いており、その場合は文章の体裁が必ずしも統一されていないからだ。改行後に1行空けている人がいたとしても、その人が常に「改行後に1行空ける」という約束を守るとは限らない。改行しても1行空けずに、行頭も下げない場合がある可能性が捨てきれない。
 読み手としては、「ここは1行空いていないけど段落があるかもしれない」という可能性を考慮しながら文章を読むのは負担になる。それなら1行空ける場合でも行頭も下げてしまえば段落の位置は明確になり、負担はなくなる。
 文章の体裁が統一されている商業サイトなどなら、そこまで考える必要はないけど。

段落の原則

 上記2点に共通する原則は、「どこが段落か一目で確認できるようにするべき」ということだ。
 この原則を踏まえれば、体裁の異なる文章でも、字下げするべきかどうか判断できる。

 例えば雑誌ではページにより様々なレイアウトがあり、文章の体裁もいろんなパターンがある。以下はその一例。


*1

 これらは一般の字下げとは違うが、段落が認識できるように工夫されていることがわかる。つまり段落が認識できるなら、字下げする必要はない。
 それを突き詰めたのがこちら。みなさんご存じ、天声人語


引用元:朝日新聞 1994年6月29日 朝刊*2/クリックで全文表示

 これは▼が段落を表している。もはや改行もしていない。狭い領域に文章を押し込める知恵だ。

 また、雑誌にはこのような例もある。

*1

 ←のように、画像の周囲につけられる説明文は字下げされていないことが多い。同様に→のような短い文章も字下げされていない場合がある。
 これらは段落が認識できる工夫がされていないのに、なぜ字下げしないのか。段落が1つしかないからだ。1つしかないなら、段落の境界を認識させる必要はない。


*1: 引用元:『gM』1999 01 ソフトバンク株式会社
*2: まったくの余談だが、このように天声人語は松本サリン事件の第一通報者をほぼ犯人として扱った。その後無実が判明した際、朝日新聞社としては謝罪したが、天声人語の欄ではこの件に一度も触れなかった。その後触れたのは2014年6月28日朝刊→。はるか20年も経過した後であり、執筆者も交替しており、この欄で犯人扱いしたことにも触れず、反省の色は不十分だ。書き写すような価値はない。