ネット上の文章は段落の先頭を1マス空けるか問題(2)

 〔約3000文字|読了の目安:6分〕

 前回のネット上の文章は段落の先頭を1マス空けるか問題(1)では、

  • 改行後に1行空けないなら、字下げするべき。
  • 改行後に1行空けるなら、字下げしなくてもよい。
  • どこが段落か一目で確認できるようにするべき。

 という原則を書いた。
 これはある程度長い文章の話であって、短い文章なら自由に書いて構わない。

 今回は細かい例を見ていく。

どれが段落なのか

 段落とは「文章のまとまり。それで一つの意味を成すもの」だ。
 それを読み手にわかりやすく、負担なく認識させることは文章の読みやすさに繋がる。
 一般に、改行をするとそこが段落の分かれ目になる。

 ところでこの記事もそうだが、改行と1行空けが両方使用されている文章もある。この場合、どちらが段落なのか。これは原稿用紙的な考え方と、HTML的な考え方がある。

■原稿用紙的な考え方

 原稿用紙の作法でいえば、改行して字下げするのが段落の表し方だ。
 1行空けについては、いくつか文章作法の本を読んだが、説明されているものはなかった。特に決まりはないらしい。小説では場面転換などで1行空けていることがある。段落よりも一段階大きい意味の切れ目、というところだろう。

■HTML的な考え方

 HTML でいえば、1行空けるのが段落だ。p タグを使うと1行程度間隔が空くが、p は〈Paragraph=段落〉の意味だからだ。では1行空けない改行はというと、これは br タグで、〈BReak=改行〉という意味だ。
 ……おや、改行したら段落が分かれるのだから、p タグと br タグはどちらも段落になってしまう。これはおかしい。ではどう解釈すればいいかというと、br タグは「段落内改行」だと考えられる。つまり br タグでは段落は分かれない。段落を分けない改行ということだ。正式な原稿用紙の作法にはないが、詩では使われている手法だと思う。
 「段落内改行」とは WZ Editor のヘルプにある用語で、Shift+Enter で入力できる。Word や HTML エディターも Shift+Enter で(段落を分けない?)改行ができるので、似たものなのだろう。

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 つまり改行と1行空けのどちらが段落かは、解釈によって変わる。
 1行空けが頻繁にある場合はHTML的(もしくは詩的)な考え方、1行空けが多くない場合は原稿用紙的な考え方でいいと思う。
 ただし改行と1行空けを併用する方法は、両者の使い分けを強く意識しないと違いが曖昧になり、散漫な文章になってしまう。なので1行空けしか使わない、と決めてしまうのも手。

任意の位置で改行することの欠点

 ネット上では、以上に述べてきた文章の書き方の他に、任意の位置で改行する方法もよく使われる。
 要するにこういうもの。


引用元:『gM』1999 01 ソフトバンク株式会社

 詩のような効果が出るためだろうか、芸能人などのライトなブログでよく使われる。
 ただしこれは印刷物では問題ないが、ウェブでは欠点がある。それは折り返しで汚くなるということだ。

 HTMLで表示される文字の大きさは、ブラウザの設定によって変わる。1行の長さがブラウザの幅に応じて変わるHTMLもある。だから1行の文字数は環境によって変わる。
 以下のように任意の位置で改行し、自分の環境ではよく見えたとしても、

*1

 1行の文字数の少ない人の環境ではこうなっているかもしれない。

 改行と折り返しが合わさり、慌ただしく読みづらい。

 そうはいっても1行の文字数なんて環境によってそんなに大きくは変わらないだろうと思う人もいるかもしれないが、今はスマホタブレットにノートパソコンと、ウェブを見る環境は多様化している。どの環境でも見栄えをよくすることを考えると、任意の位置での改行はおすすめできない。*2

 1文ごとに改行する(。で必ず改行する)書き方もあるが、それも改行と折り返しが合わさりやすいので良くないと思う。


*1: 芥川龍之介『小説の読者』青空文庫 に加工。以下同じ。
*2: とはいっても自分はスマホを持っていないので、実際スマホでどういう見栄えになるかは知らない。

段落の先頭にかぎ括弧がくる場合

■字下げしない場合

 小説を書こうとか思っちゃったことがある人は知っているだろうが、小説では段落の先頭にかぎ括弧がくる場合、字下げはしないことになっている。会話文、強調のかぎ括弧ともに。(正確にはそうではない場合もある。後述)


引用元:島田荘司占星術殺人事件光文社文庫 p. 41

 前回書いたように、段落の先頭を字下げしないと、前段落の最後の行末に文末がくる場合、そこに段落があるかどうか判断できなくなる。たとえ先頭がかぎ括弧であっても。
 なのになぜこうするのか、ネットなどで調べたがわからなかった。『島田荘司のミステリー教室』(南雲堂)には「全角さげる約束ごとにすると、書く際に煩雑だし、間違いが起こるし、現れる効果と労力が釣り合いません」(p. 14)とあるが、なぜ煩雑なのかわからない。原稿用紙なら1マス空けるだけだし、テキストエディターならスペースキーを1回叩くだけだし、ワープロソフトならインデントの設定をしておけば何もする必要すらないだろう。
 小説は会話文が多く頻繁に行頭にかぎ括弧が来るし、会話文の前には大抵改行するので、折り返しで行頭にかぎ括弧が来ることは滅多にない。そのため「いちいち下げなくてもいいんじゃない?」っていうことだろうか。

■字下げする場合

 ところが新聞は、段落の先頭にかぎ括弧がくる場合でも字下げする。


引用元:朝日新聞 2016年9月17日 朝刊*3

 小説以外の本では見たところ字下げしない方が多いが、岩波書店の本は字下げしている(小説も)


←引用元:木下順二『“劇的”とは』岩波新書 p. 97
→引用元:ユーゴー作/豊島与志訳『レ・ミゼラブル(一)』岩波文庫 p. 34

 出版社か叢書(レーベル)ごとに決まっているようだ。

■半角で字下げする場合

 ところで「かぎ括弧は字下げしない」と書いたが、よく見ると半角字下げしていて、かぎ括弧が半角になっている例がけっこうある。


引用元:マイケル・ボンド作 ペギー・フォートナム画 田中啄治/松岡享子訳『パディントンのラストダンス』福音館書店 p. 22

 上記の画像、「時間は~」の部分は段落の先頭で、隣の「若いブラウン~」は折り返しだ。折り返しの方が半角上にいっているということは、段落の方は先頭に半角スペースがある。そしてかぎ括弧が半角なので、合計で全角1マスになっている。
 他に講談社文庫、集英社新書ちくま文庫などもこの形式だった。
 なぜこんな微妙なことをしているのかよくわからない。そもそもこれ原稿用紙で再現できないし。やはり段落と折り返しの区別をつけるためだろうか。

 しかし半角を使い分けるなんて面倒なので、個人的にネット上の文章については、小説は下げない(下げてもいいが)、その他は下げる、でいいと思う。


*3: 連載小説については、岩波文庫を原典としている『吾輩は猫である』は字下げしており、新連載のものは字下げしていなかった。